高木登劇評-あーでんの森散歩道
 
   夜想会・第25回公演 『十二夜』               No. 2001_003

 この日は夕方から雪が舞い始め、予報では明け方までには10cmほど積もるということであった。
 十二夜といえばクリスマスから数えて12日目の夜で1月6日、この日は東方の3博士来訪を祝う顕現日で、クリスマスの一連の祝祭日の最終日でもある。季節は冬で、雪はつきもののような気がするが、『十二夜』では雪の雰囲気はまったく感じられない。それは舞台がイリリアというアドリア海の東海岸を中心とする南国の情緒のせいであろうか。雪の中をいそいそと出かけながら、そんな事を考えていた。
 夜想会のことは3年前(98年8月)に『ハムレット』を観て印象深かったのを覚えているが、今回は1週間前に俳優座の『十二夜』観た後でもあり、いやでもそれと比較してみたくなった。
 開幕は偶然にも俳優座の『十二夜』と同じように、嵐の後ヴァイオラが船長の助けを得て無事イリリアの海岸にたどり着いたところから始まる。地中海の空を思わせるように、嵐の後の海岸には、抜けるような青空を舞台背景にしているのが印象的である。
 俳優座の『十二夜』では原作の1幕2場に始まって、1場の場面をうまく取り込んで4場と融合させるのだが、こちらは1場が完全に省略され、2場から3場のオリヴィア邸へと続く。
 俳優座との大きな違いは、夜想会ではヴァイオラとセバスチャンの双子の兄妹を川上麻衣子が一人二役で演じる。双子の一人二役は今回初めて見るわけではないが、最後の大円団でセバスチャンとヴァイオラが舞台で同時に顔を出さなければならない場面では、今回の演出のようにセバスチャンに代役を立てる必要が出てくる。その代役にはヴァイオラの声の吹き替えを用いて一切しゃべらず、二人の再会のリアリティ感が薄れていた。
 終幕は、星空の満天を背景に、ヴァイオラとオーシーノ公爵の二人が静かに踊り、道化のフェステが背後の丘陵を、自らの声の吹き替えをバックに黙然と消えていく。
 俳優座の『十二夜』と夜想会の『十二夜』では、個人的な好みから言えば俳優座の『十二夜』に軍配をあげる。

 

小田島雄志訳、野伏翔演出、企画制作/夜想会
1月20日( 土)18時30分開演、紀伊國屋ホール、チケット:5000円、座席:F列10番

 

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