高木登劇評-あーでんの森散歩道
 
   板橋演劇センター公演 No. 42 『テンペスト』       No. 2001_001

 今年で結成20周年を迎え、21年目を新世紀の始まりとともに新たなる一歩を踏み出す板橋演劇センターの公演は今回で67回目となり、内シェイクスピア劇は42回目となる。作品数ではこれまでに15作品を上演している。
 劇団員の大半が区内の会社員や学生で、このセンターに参加するまでまったく演技経験の無かった人も多いという。
 今回主役を務める岡本進之助(73歳)は、建築金物商社の社長で、仕事や子育てが一段落した55歳の時、演劇をやりたいという若いときからの夢をかなえたいと、センターに飛び込んだという。以来、『リア王』や『ロミオとジュリエット』などに出演してきた。この人の演技を見ていると、心底楽しんでいるのが分かって、見る方も嬉しくなってくる。
 演技を楽しんでいるのは劇団員全員にも言えることである。
 センターの劇団員はプロではないがプロにも劣らないという気構えと、プロの劇団の演出や俳優の演技にも負けないという意気込みがあり、そういうパワーを感じさせる。
 芝居を観に来ている人も、下駄履きの下町風景の感じで気取りがなく、アト・ホームな雰囲気である。
こんな芝居の雰囲気が好きだ。私の隣のおじさんは、開演前からぐっすり寝込んでいて、劇が始まると今度はいびきをかきだした。さすがにその音にはまいったのと、酒の臭いには閉口した。
 肝心の芝居については、演出の遠藤栄蔵がちょっぴり斬新さをひねり出し、エアリエルを7人の女優陣に演じさせ、彼女らを妖精にも変じさせる。
 プロスペロー(岡本進之助)が嵐を起したあと、娘のミランダ(下田裕子)に過去の出来事を語る際、舞台後方に話題の人物、裏切り者の弟アントーニオやナポリ港アロンゾ―、忠臣ゴンザローなどを登場させることで、プロスペローの話を可視化させるという効果を持たせている。
 道化役のステファノ―とトリンキュローを、酒井恵美子と伊藤陽子の二人が楽しげに演じる。
 キャリバンには演出を兼ねる遠藤栄蔵が演じ、プログラムに載せた彼の言葉「今回は陽気に気楽に自由に、ヤッホー!ヤッホー!自由に〜!」通り、役を楽しんでいて、観客もその雰囲気につられて楽しむことできた。
 上演時間は休憩なしで、2時間弱。

小田島雄志訳、遠藤栄蔵演出
1月13日(土)14時開演、東京芸術劇場・小ホール2,チケット:2500円、座席:K列12番

 

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