高木登劇評-あーでんの森散歩道
 
   RSC公演 『間違いの喜劇』(The Comedy of Errors)    No. 2000_015

 S席で38ポンドというのに席はほとんど後ろの方で、12ポンドの席と3列しか離れていない。舞台までかなり離れていて遠く見下ろす形である。
 半円形の張り出し舞台の前方中央に噴水があり、本水が小さく噴き上げている。舞台後方の中央奥には、扉。舞台上手に螺旋階段。舞台上の装置といえばこれだけである。
 開演して、囚われの身となったシラクサの商人イージオンが、奈落からせりあがって来る獄房に監禁された状態で、両手は捕縛されたまま登場。
 『間違いの喜劇』は、その軽妙さと軽快なタッチが生命線であろうかと思う。
 シラクサとエフェサスの二組の双子の兄弟が織りなす周囲の取り違えによる誤解のおかしみが、どれだけ自然でホントらしく思われるかでこの劇の面白みは決まると言っても過言ではない。
 とりわけその面白み、おかしみは、主人公のアンティフォラスより従僕のドローミオ兄弟にかかっている。
 イアン・ヒュー(Ian Hughes)とトム・スミス(Tom Smith)という俳優がそのドローミオ兄弟を演じていたが、ホントの双子の兄弟以上に似ている印象を持った。
 上演全体を通じて言えるのは、演技のゆとりであった。それは舞台での遊びがふんだんにあることにもよった。
 アラビアの商人が出てきて、最後のめでたしめでたしの大円団で、全員が記念写真を撮ったりすることもその一つであったが、観客へのサービス精神に富んだ演技、上演であった。まさに芝居を楽しむ境地へと誘う。
 ほのぼのとした満足感を味わって、ホテルへと戻った。

 

6月3日(土)19時30分開演、ロイヤル・シェイクスピア・シアター
チケット:(S席)38ポンド、座席:サークル・G列37番

 

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