高木登劇評-あーでんの森散歩道
 
   板橋演劇センター公演 『ロミオとジュリエット』          No. 2000_001

 頒価300円の公演パンフレットに、
 板橋演劇センター公演 No.64
 板橋演劇センター20周年記念公演
 遠藤栄蔵シェイクスピア・プロデュース 39 thとある。
 継続は力なりというが、地域の演劇団体としてよくぞここまで続けられていると感心する。
 この板橋演劇センターの事を知ったのは、3年前の『リア王』が初めてである。
 昨年が『マクベス』で、年3〜4回公演のうちシェイクスピア作品は年2回のペースとなっているが、同一作品を再演しているので作品数としては37作中14作となっている。
 この『ロミオとジュリエット』の初演は84年で、再演が今から10年前の90年で、今回が3回目の上演となる。
 板橋演劇センター20周年を記念しての公演であり、それだけに思い入れもあることだろう。
 ロミオには当劇団の座長にして演技部長でもある看板俳優の鈴木吉行、ジュリエットを演じるのは劇団の会員局長の中堅女優、伊東陽子を配している。
 プロローグ役とロレンス神父には、当劇団大御所の岡本進之助が演じ、乳母とモンタギュー伯を演出の遠藤栄蔵が演じる。
 プロローグを務める岡本進之助は若々しく、とても今年73歳を迎えるとは思えないほどはつらつとしている。
 板橋演劇センターのシェイクスピアはこれまで見てきた限りでは、ストレートな演出でてらいや新奇な奇抜さなどなく、どちらかといえば安心して見られる演出である。
 舞台装置も簡素で、ストレートプレイとしての台詞重視の舞台と言える。
 張り出し舞台で、客席は三方から舞台を囲む形で観る格好となっており、観客席通路をうまく使って登場人物を効果的に登場させることで、舞台の親密感を高めている。
 場面展開は登場人物の登場退出でなされるので、テンポが速く軽快である。
 演技面では、ロミオの鈴木吉行は力が入り過ぎ、かえって台詞の高揚感が伝わってこないうらみがある。
 台詞もしっかりしており、声も太く大きく、よく通るのであるが、詩としての高まりが感じられない。
 有名なバルコニーシーンにしても、今一つ物足りなさを感じたのはその詩的高揚感の欠如からであったと思う。
 日本語と英語による差があると言えばそれまでだが、今回の演出ではポエティック(詩的)よりポエトリー(詩そのもの)として臨んでいるだけに惜しい気がする。
 道化のピーター役のエミコ・サカイ(酒井恵美子)は、台詞をつっかえそうな不安定感があるが、そこが却って愛嬌にもなっていた。
 上演時間は、途中10分の休憩を入れて3時間。
 地元の熱心な不安に支えられたこの劇団の一層の活躍を期待したい。

(訳/小田島雄志、演出/遠藤栄蔵、1月15日(土)14時30分開演、東京芸術劇場・小ホールにて観劇、
チケット:2500円、座席:J列4番)

 

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