高木登劇評-あーでんの森散歩道
 
   シェイクスピア・シアター公演 『間違いの喜劇』            No. 1999-015
空白

ミニシアター”New Place”オープニング公演

 今年創立25周年を迎えたシェイクスピア・シアターがこの度待望のミニシアターを完成し、その杮落としの祝祭劇として『間違いの喜劇』が上演された。
 このミニシアターはこれまでの高円寺の稽古場を改装したもので、ミニシアターならではのアトホームな雰囲気に満ちており、客席はそれぞれシェイクスピアの作品の代表的登場人物の名前が付けられている。
 早々と予約して最前列の中央部7番、ヘレナ(『夏の夜の夢』)の席を確保した。
 左隣が今回の演目の登場人物であるエドリアーナ、アンティフォーラス、ルシアーナの席となっていて、今回のミニシアターは席選びにも楽しみを添えてくれる。
 シェイクスピア・シアターとの出会いは、1993年5月、パナソニック・グローブ座でのこの『間違いの喜劇』からで,仮面と白いボールを使っての演出に、シェイクスピアをこれほど面白く楽しい劇にされたのを観るのも初めてで、新鮮な驚きを感じたことをまざまざと記憶している。
 シェイクスピア・シアター公演の『間違いの喜劇』を観るのはこれで4回目となるが、その間にメンバーの入れ替わりがあって、これまでのキャスティングと変わっていないのはイージオン役の円道一弥(他に、バルタザー、ドクター・ピンチを兼役)とエドリアーナ役の吉沢希梨の二人だけで、二人は今回も同じ役を演じ、若手の演技を引き締めており見ていても安心感があった。
 ルシアーナ役の斉木彩(19期生)は、若手中心となった今回の出演者の中ではもう中堅の存在となった。
 アンティフォーラス兄弟は、フレッシュマンの中山龍太郎(23期生)と戸田直寛(24期生)、ドローミオ兄弟は小島則子(20期生)と富山昌美(23期生)の女性陣が演じている。
 ドローミオ兄弟を女性にしたのは現在のメンバーからすると必要に迫られての選択ではなかったかと思うが、男性軍顔負けの熱演で非常に面白い効果があり、それは一つには仮面劇ならではの効果でもあっただろう。
 女性軍の優位性はエフェサスの公爵ソライナスのキャストにも表れて久保田広子が演じ、劇中では「公爵」と呼ばれる代わりに「女王」と呼ばれていた。
 とにもかくにもシェイクスピア・シアターの新しい門出として、こんな楽しい劇を見せてもらうことが出来たことを喜びとしたい。

(翻訳/小田島雄志、演出/出口典雄、99年9月19日(日)14時、
高円寺ニュープレイスにて観劇、 チケット:3500円、座席:7番ヘレナ)

 

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