公演2日目だというのに、11時半開場予定が30分遅れで、開演も15分遅れとなった。
舞台上では俳優たちが思い思いにリラックスしたスタイルで、気分の集中をはかるかのように過ごしている。
劇場の中央部が舞台となって、1階席はその中央部を挟んで客席となっているので、観客は観る人であると同時に観られる人になる。
舞台の高さは1階席の観客の目線の下になっているので役者の動きを見上げる必要がなく、舞台が水平に広がっているので役者の出入りは上手ないしは下手からか、客席の通路を通ってということになる。
上演時間は途中20分間の休憩を挟んで約4時間で、ほとんど省略がない。
特に前半部は原作に忠実といってよく、省略が少ない分、台詞がかなり早く、シェイクスピア時代の本来のスピードに近いのではないかと思った。
ハムレット役のポール・リス(Paul Rhys)は写真で見た印象は繊細で華奢な感じであったが、台詞は力強く、’To be or not to be’の台詞も早く進むが、ここで一呼吸おいて’that is the question’と入っていくのが効果的であった。
ドナルド・サンプター(Donald Sumpter)のクローディアスは、脂ぎった悪玉ではなく、思索的な雰囲気を持った知的な印象がした。彼はハムレットの父亡霊の役も兼ねており、面白いキャスティングだと思った。
スザンヌ・バーティシュ(Suzanne Bertish)のガートルードはこれまで観てきたガートルードとは異なり、かなりこわもてのするがっしりした感じであったが、本来のガートルードはこんなものではないだろうかと思えた。
舞台のセッティングの仕方や休憩時間の取る場面など、ケネス・ブラナーの映画『ハムレット』を相当に意識したものに思えた。2階席に据え付けられた亡霊の鎧姿などもそのよい例だと思った。
ちょっとした遊び心も随所に見られたが、その一つに、オズリックの左の耳のイヤリングなどはシェイクスピアの肖像画を思い出させた。
全体的には非常に素直な演出だと思った。
(演出/ローレンス・ボズウェル、99年6月5日(土)12時、東京グローブ座にて観劇、
チケット:(S席)8000円、座席:1階G列22番)
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