板橋演劇センターが結成されてから18年が経つという。
公演回数もこのたびの『マクベス』で61回目、内シェイクスピア作品は39回目になり、この『マクベス』は1986年の初演から4度目となる。
実に息の長い活動である。地域の演劇活動がかくも長く続けられるということは、プロデューサーの遠藤栄蔵の並々ならぬ努力と、それを支える劇団員、そして熱心な地域の観客があってのことだと思う。
演出は実にシンプルで、エプロンステージの中央に花道を設け、それを三方から観客が囲むようになっており、客席と舞台の距離感がないので、観客は舞台との一体感を共有することができる。
演出の工夫の一つに魔女の登場が3人ではなく、13人となっている。
舞台背景には、中央部におよそ一間半四方の布地に、龍がその角に王冠をいただいた絵が描かれているのが張られている。
龍の色は緑色で、マクベスもマクベス夫人も同様の緑色の衣装を身に着けているのが象徴的である。
この背景の龍がマクベスの表象であることは、マクベスが「あれもいつかは死なねばならなかった、このような知らせを一度は聞くだろうと思っていた。明日、また明日、また明日と、時は小刻みな足取りで一日一日を歩み、ついには歴史の最後の一瞬にたどりつく」という台詞を口にするとき、頭の上の王冠を手に取って語るのだが、その構図が背景の絵、龍が両角に王冠をかけているのとまったく同一であるところから察せられる。
マクベスには遠藤栄蔵が初演以来演じており、今回が4度目となる。
マクベス夫人の鈴木吉行は台詞回しもしっかりしているが、丸みが勝って凄味に欠けている気がした。
脇を固めているのは、友情出演のマルノ企画の丸野光一郎(バンクォー/医師)と門番を演じる谷内洋二。
昨年リア王を演じた72歳の岡本進之助がダンカン王を演じ、どこか人の良さをにじませ好感を覚える。
終わりは原作と異なり、マクダフはマルカムに王冠を渡さずに見つめ返すだけで、象徴的な幕切れとなっているのが面白い試みだと思った。
(訳/小田島雄志、演出/遠藤栄蔵、1999年1月9日(土)19時開演、
東京芸術劇場・小ホールにて観劇。 チケット:2500円、全席自由席)
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