高木登劇評-あーでんの森散歩道
 
   シェイクスピア・グローブ・シアター公演『お気に召すまま』    No. 1998-016
白背景10

 舞台はロンドンのグローブ座を模して、全面両脇には装飾を施した円柱、1階席は椅子を取り払って全員が立ち見席とし、観客席そのものが舞台となり、アーデンの森となる。
 観客席と舞台の境がないことで上演中客席が暗くなることがなく、終始明るい雰囲気が漂っている。
 開演に伴い、牧歌的民族衣装を着た楽団が客席後方の扉から舞台の方に向かって音楽を奏でながら登場してきて、私たちはもうそこから劇に引き込まれ、劇に参加していくことになる。
 音楽に気を取られている合間に、舞台上では静かに黙劇が演じられている。
 オリヴァー、オーランド―ら3兄弟の父親が亡くなる直前の場で、遺言を言い渡している情景で原作にはない演出で面白い趣向だと思った。
 オーランドとフレデリック公爵お抱えのレスラーとの格闘技は立ち見席の土間がリングとなり、私たちはその観客として参加することになる。
 レスリングのリングサイドでの格闘のように所狭しと動き回るので、観ている者をハラハラさせ、私たちはあっちによけ、こっちによけ右往左往する。
 道化のタッチストーンも観ていて楽しく、いかにも宮廷の道化役という雰囲気を持たせていた。
 皮肉屋のジェークィズはジョン・マケナリーという年配の俳優が演じており、こちらもいい雰囲気であった。
 英語での台詞は全体に分かりやすい発音で聞き取りやすかった。
 バグパイプやパーカッション、弦楽器などを使って音楽をふんだんに聞かせてくれ、音楽劇の楽しさが牧歌的な明るい雰囲気をかもし出していた。
 ロザリンドのエピローグはアドリブのようにして語られたので、劇中の台詞というより観客へのサービスの台詞かと間違えたくらいで、劇中劇の観客としての私たちに向かって語られ、いつしか自分も観客という演技をしていたように感じたのだった。
 軽妙なタッチで親しみを感じる演出を楽しんでさわやかな気分で劇場を後にした。

 

演出/ルーシー・ベイリー、1998年10月4日(日)14時開演、
パナソニック・グローブ座にて観劇。 チケット:4000円、座席:1階 スタンディング

 

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