高木登劇評-あーでんの森散歩道
 
   シェイクスピア・シアター公演 『ヴェニスの商人』      No. 1998-009
白背景10

 グローブ座でシェイクスピア・シアターが久々に、<内実と外観>をテーマにして、『ヴェニスの商人』と『じゃじゃ馬馴らし』を連続上演。

『ヴェニスの商人』は、真っ黒な舞台背景に、道具は質素な背もたれなしのベンチが2つ。そのベンチを効果的に使ってシンプルな演出。衣装もシャイロックが黒のスーツ、アントーニオとバッサーニオは白っぽいクリーム色のダブルのスーツ。
 気になったのは吉田鋼太郎などのOBの客演が多く、シェイクスピア・シアターのメンバーの出演がさびしい。
 吉澤憲や大塚英一などのベテラン、中堅どころの顔が見えない。退団したのだろうか?!
 シャイロックは客演の吉田鋼太郎。台詞力はさすがだが、気になったのは、演出上のことかも知れないが、ズボンのポケットに手を突っ込んだまま、背をそらし気味に演技していたのに違和感を覚えた。 そのせいもあってか、人肉裁判の敗北も、今一つ悲壮感に欠けていた気がした。
 久々のシェイクスピア・シアターの公演であるが、どこか元気に欠ける寂しみを覚えた。
 ただ、ネリッサ役の吉沢希梨の目の表情が生きていて、うまいと思った。

 

小田島雄志訳、出口典雄演出
5月17日(日)14時開演、パナソニック・グローブ座、チケット:3500円、座席:E列17番

 

 

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