高木登劇評-あーでんの森散歩道
 
   ASC公演 『夏の夜の夢』                   No. 1998-008
白背景10

 キャスティングが面白く、ハーミアに金子はいり、ヘレナに石山崇、アテネの職人たち、ボトム、スナウト、フルート、スナッグらは女性陣が演じる。
 舞台は遊びの仕掛けがかなりあって、舞台上方左右にビデオを2台ずつかけ、開演前からそれにあかはらやカエルが泳いでいる水槽風景を映し出している。
 水槽の世界に棲むあかはらやカエルは両生類で水の世界と陸の世界の両方を行き来する。
 それは、アテネの町と森の世界(異界)、あるいは昼の世界と夜の世界の表象と汲み取ることもできる。
 パックを演じる彩乃木崇之はハンディビデオを使って、ライサンダーとデミートリアスの決闘騒動を生中継して、その様子を舞台上方のビデオに映し出す。
 俳優陣は舞台上だけでなく、奈落から天井まで縦横無尽にアクロバット的に駆け巡る、元気な舞台である。
 ハーミアとヘレナを男優にした性倒錯は、グロテスクなかよわさがあって遊び心を感じる。
 開演の始めから終わりごろまで、奥田構造が舞台正面の壁に森の絵を描き続けている姿にも遊びがある。
 演技としては、オーベロン、シーシアス、クィンスのトリプル役の菊地一浩が台詞のメリハリもあり、一番しっかりしていた。

 

(訳/松岡和子、演出/彩乃木崇之、1988年4月11日(土)14時開演、
東京芸術劇場・小にて観劇。 チケット:4000円。全席自由)

 

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