ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーによる『夏の夜の夢』を銀座セゾン劇場で観た。
銀座セゾン劇場開場10周年記念として、95年の『冬物語』、96年の『恋の骨折り損』に続くRSC来日公演の第三弾で、演出は95年の『冬物語』と同じく、エイドリアン・ノーブル、美術も同じくアンソニー・ウオードが担当。
まず感じたことは非常に色彩的、かつ視覚的演出であるということであった。
『夏の夜の夢』そのものが、どこか幻想的であり、魅惑的である。従って絵にもなるし、音楽にもなる。
シェイクスピアが本来、想像力豊かな言葉からなる戯曲であり、その言葉の持つ豊富なイメージに圧倒されんばかりであるが、現代の心の貧しい、貧弱な想像力では、じゅうぶんなイメージを膨らますこともできない。
その貧弱な想像力を補ってくれるかのように、エイドリアン・ノーブルの演出は、アンソニー・ウオードの美術と相まって、絵画的に堪能させてくれる。
『冬物語』では舞台小道具の風船が視覚的に効果をもたらしていたが、今回はパラソルが色鮮やかに、色彩豊かなイメージを呼び起こしてくれる。
『夏の夜の夢』では「森」が重要なファクターであるが、その森の木立のイメージを裸電球を使って、ファンタスティックに表象している。
エイドリアン・ノーブルはシェイクスピアの言葉の持つ想像力豊かなイメージを、巧みに視覚的に表象することに、実に卓越していると感心する。
これまで6回ほど観てきた『夏の夜の夢』のなかでいつも興味があるのが、アテネの職人たちが演じる劇中劇であるが、そのなかでも機屋のボトムが演じるピラマスが剣でもって自殺するにあたって、「死ぬ、死ぬ」を連発する場面が実に面白い。
エイドリアン・ノーブルの演出では「死ぬ」という言葉の代わりに、それを所作で表象する。
これも彼の視覚的効果の表れなのか、ボトムを演じるバーンサイドの意図した演技なのか、そこのところは分からないけれども、自分としては「死ぬ、死ぬ」の連発を期待していた。
エイドリアン・ノーブルの演出は、本当に面白く、楽しい。
エイドリアン・ノーブル演出
1月19日(日)、13時30分開演、銀座セゾン劇場、チケット:(S席)10000円、座席:5列12番
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